■展示紹介
≪味覚の美感≫は、生産や消費、分かち合いの総体的な経験を通して、私たちが住んでいる都市を生動させる同時代の食文化(Gastronomy)に注目した展示です。食文化全般に対する社会的関心がかつてないほど高まっていますが、この関心は生活を省察して新たな共同体を想像するというより、文化産業の最も熱いアイテムとして消費されているのも事実です。
食文化は、美味しい店を探し回る「美食」の体験や新しい「味」の経験に耽溺する感覚の消費行為から脱して、種(seed)を植えて育てる食材の生産から、都心の市場に集まって食品を売買し、話を交わして、交流する行為を介して「都市」という場所を再発見して生活の関係設定を再編成します。さらに、農家とシェフが一緒に材料を研究して新しいレシピを開発し、多くの人と共有する共同体文化まで拡張されています。
芸術と生活を一致させようと努力していた前衛的なアーティストやデザイナーは、創作活動と共に衣食住について注目しました。芸術が個人の生活を回復し、新たな共同体を築いていくことができるという信念は、生活の中で最も基底に置かれた行為と共に実現できると考えました。そして、その共同体を想像するために食べて生きる自律的なシステムを考案しようとし、その中で食品は最も感覚的でありながら、致命的な手段でした。新しいものを生産するのに汲々としていたデザイナーも何を作るかより、どのように生きて行くのかを悩みながら、自然に人々の間の関係を構成する手段としてのデザイン方法論を想像しました。この中で食文化は重要な要素として機能したことも事実です。
本展は、都市生動(Food
x Urban Mobility)、食品と共同体(Food x Community)、食品を介した共有と分かち合い(Food x Sharing
Culture)の三つのキーワードをもとに、合計13人/チームの作品を通して多様な生活の様相を「都市という舞台」上に繰り広げます。また、ソウル館8展示室を拠点に展示が行われる約3ヶ月の期間中に都市で起きる食文化の様々なシーンを捕捉すると同時に、観者が積極的に介入できる参加の舞台を構成し、視覚、聴覚、味覚、嗅覚に至る多感覚的(multi-sensory)経験を提供します。
食品を介して経験して来た味覚を単なる感覚充足の手段ではない、個人と個人、個人と共同体をつなぐ社会的媒介としてアプローチしようとした本展は、私たちが暮らす都市の場所性を改めて認識し、未だ発見されていなかった都市の美感と向き合うことができる機会となるはずです。